ADS-B Exchangeの使い方——空港コードで飛べば、日本の空もすぐ見える

ADS-B Exchangeの使い方——空港コードで飛べば、日本の空もすぐ見える

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以前、Flightradar24はなぜ機体を映せるのかという記事で、ADS-B Exchangeというサービスに軽く触れた。「無検閲(unfiltered)を売りにしていて、軍用機や要人機もそのまま表示される」という紹介だ。

ただ、あの記事では使い方までは書かなかった。実際に開いてみると全部英語で、ボタンがアルファベット1文字だけ並んでいる。何がどこにあるか分からないまま閉じてしまった人も多いのではないかと思う。

そこで今回は、実際に操作しながら手順を整理した。結論から言うと、無料・ログイン不要で、覚えることは驚くほど少ない。そして——パイロットにとっての本当の価値は「無検閲」ではなかったというのが、今回いちばんの発見だった。

まず開く場所を間違えない #

最初のつまずきポイントがここだ。

地図は globe.adsbexchange.com にある。トップページの adsbexchange.com は会社・サービスの紹介ページで、地図そのものではない。いきなり globe. から入るのが早い。

開くと世界地図に大量の機体が表示される。右上に Total Aircraft(全世界で捕捉中の機数)と On Screen(いま画面内にいる機数)が出る。筆者が試したときは全世界で13,000機超だった。

ログインは不要。無料で全機能が使える。有料(Premium)は「広告が消える」「衛星写真レイヤーが使える」の2点で、位置情報の中身は無料と同じである。

手順①:空港コードで日本へ飛ぶ #

初期表示はアメリカだ。日本を見たいなら、いちばん速いのが空港コードでのジャンプである。

右のサイドバーで Search タブを選ぶと、下のほうに

Jump to Airport or Latitude, Longitude

という入力欄がある。ここに RJTT と入れて Jump を押す。これで羽田上空に飛ぶ。

入れるのは4文字のICAOコードだ。日本の主な空港はこうなる。

空港コード空港コード
羽田RJTT成田RJAA
伊丹RJOO関西RJBB
中部RJGG新千歳RJCC
福岡RJFF那覇ROAH
仙台RJSS八尾RJOY

緯度経度でも飛べるので、ヘリポートや山岳地帯など空港コードがない場所を見たいときは、そのまま座標を入れればいい。

実際に RJTT で飛んでみると、地図の地名は日本語で表示される(OpenStreetMapベースのため)。機体リストにも JAL・ANA・ADO・NCA といった見慣れたコールサインが並ぶ。ここまで来れば、あとは直感的に使える。

手順②:特定の機体を探す #

同じ Search タブの上側にある Search 欄は、4つの情報で検索できる。

  • Hex ID(ICAO 24bitアドレス。例:86D1DE)
  • コールサイン(例:ANA13)
  • 登録記号(例:JA01AN)
  • 機種コード(例:B788)

機種コードで検索できるのが地味に便利で、たとえば B788 と入れれば画面内の787-8だけが残る。ヘリなら EC45 A139 B412 といった具合だ。

手順③:機体をクリックする——ここが本番 #

このサイトの真価は、機体を1機クリックしたときに出る詳細パネルにある。

Flightradar24の無料版に慣れていると、情報量の差に驚くと思う。実際に1機クリックして出てきた項目を、意味とともに整理する。

先に全体像を出しておく。パネルは8つのブロックに分かれていて、それぞれ答えている問いが違う。

機体をクリックすると出る詳細パネルの構成 8つのブロックは、それぞれ違う問いに答えている SPATIAL 位置・高度・昇降率・対地針路 「いまどこを、どう飛んでいるか」 SPEED GS / TAS / IAS / マッハ 「対地・対気・指示、どれで速いのか」 ALTITUDE 気圧高度 / 幾何高度 / QNH 「どの基準で測った高度なのか」 DIRECTION 対地針路 / 真方位 / 磁方位 / バンク角 「機首はどこを向いているか」 WIND 風向・風速 / TAT・OAT 「予報ではない、その高度の実測の風」 FMS SEL Sel. Alt. / Sel. Head. 「次に何をするつもりか」 ★ここが本命 SIGNAL 取得元 / RSSI / 受信機数 / 経過秒 「この位置は、どれくらい新しいか」 ACCURACY NACp / SIL / NACv 「この位置は、どれくらい信用できるか」

以下、上から順に見ていく。

位置・速度の基本(SPATIAL) #

項目意味
Groundspeed対地速度
Baro. altitude気圧高度(▼は降下中)
WGS84 altitudeGPS由来の幾何高度
Vert. Rate昇降率(ft/min)
Track対地針路
Pos.緯度経度

気圧高度とGPS高度が並んで出るのがポイントだ。両者の差は、その空域の気圧配置を反映している。

速度の内訳(SPEED) #

項目意味
Ground対地速度(GS)
True真対気速度(TAS)
Indicated指示対気速度(IAS)
Machマッハ数

IASとTASとマッハが同時に見える。GSとTASの差から、その機体が受けている風が読める。航法計算盤で自分で出す値が、実機のものとして並んで表示されるわけだ。

高度と気圧(ALTITUDE) #

項目意味
Barometric気圧高度
Geom. WGS84幾何高度
QNHその機体が設定している高度計規正値

QNHが見えるのは驚いた。高度計規正の実際の値が、外から分かってしまう。

そもそも、なぜ同じ機体の高度が2つ(QNHを入れれば3つ)並ぶのか。基準にしている面が違うからだ。

同じ1機の高度が、3つの数字になる理由 基準にする「面」が3つあるから ① 1013.25 hPa の面(標準大気) ② 海面 = QNH の基準面(図では QNH 1020 hPa) ③ WGS84 楕円体面(GPS が高さを測る基準) 地表 Barometric Geom. WGS84 Barometric = ①からの高さ(気圧で測る) Geom. WGS84 = ③からの高さ(GPS で測る) QNH = ②の気圧として機体が高度計にセットしている値 ※QNH が 1013.25 より低いときは、①は②より下にくる

気圧高度とGPS高度の差は、その空域の気圧配置を映している。両方が並んで出るというのは、本来なら別々に用意しないと比べられないものが、勝手に比べられる状態で置いてあるということだ。

針路の内訳(DIRECTION) #

Ground Track(対地針路)、True Heading(真方位)、Magnetic Heading(磁方位)、Magnetic Decl.(偏差)、Track Rate、そして Roll(バンク角)。

機首方位と対地針路が別々に出るので、両者の差=偏流(ドリフト)がそのまま読める。バンク角まで出るのは、正直やりすぎではないかと思うほどだ。

風と気温(WIND) #

項目意味
Speed風速
Direction (from)風向(どこから吹くか)
TAT / OAT全温度/外気温

実機が測っている上空の風と気温が見える。予報ではなく実測値だ。飛行計画の風の見積もりが妥当だったかを、あとから突き合わせられる。

この3つは、1枚の図に収まる #

ここまで見てきた SPEED・DIRECTION・WIND は、バラバラの数字に見えて、実は航法三角形そのものだ。図にするとこうなる。

SPEED・DIRECTION・WIND は、1つの三角形に収まる ADS-B Exchange は、この三角形の3辺すべてを同時に表示する 偏流角(ドリフト) = True Heading と Ground Track の差 機体の 現在位置 True(TAS) 機首が向いている方向の速度 True Heading(真方位) Wind(風) Speed / Direction (from) Ground(GS) 実際に地面の上を動く速度 Ground Track(対地針路) 紺の辺と朱の辺の長さの差が、風の前後成分。 紺の辺と朱の辺の向きの差が、偏流角。 航法計算盤で自分で出す値が、実機の数字として並んで表示される

紺の辺が「機首が向いている方向へ、TASで進もうとする分」。緑の辺が「風に流される分」。その合成が朱の辺、つまり実際の動きだ。

航法計算盤で紙の上に描いてきた三角形が、実機の値で全部埋まった状態で出てくる。答え合わせができる、ということでもある。

自動操縦の設定(FMS SEL) #

項目意味
Sel. Alt.選択した目標高度
Sel. Head.選択した目標方位

ここがいちばん驚いた項目だ。その機体がオートパイロットに何ftをセットしているかが分かる。

つまり、いま21,200ftを降下中の機体が Sel. Alt. 6016 ft を表示していれば、まだ6,000ft付近まで降りる予定だと読める。次に何をするつもりかが見える、ということだ。

図にすると、読み方がはっきりする。

Sel. Alt. が読めると、「この先」が分かる 現在の高度と昇降率は「いま」。選択高度は「これから」。 高度 時間 → Sel. Alt. 6,016 ft Baro. altitude 21,200 ft ▼ Vert. Rate −1,800 ft/min いま あと約 15,000 ft 降りる予定と読める ここで水平飛行に移る見込み Vert. Rate が「いま何をしているか」、Sel. Alt. が「次に何をするつもりか」。 この2つが並ぶことに、このサイトの価値がある。

電波の受信状況(SIGNAL) #

Source(ADS-B / MLAT などの別)、RSSI(受信強度)、Msg. Rate(メッセージ頻度)、Receivers(何台の受信機が拾っているか)、Last Pos./Last Seen(最終受信からの経過秒)。

その位置情報がどうやって得られたかが明示されるのは、このサイトの誠実なところだと思う。ADS-Bなのか、MLATで割り出した推定位置なのかで、信頼度は当然違う。

精度指標(ACCURACY) #

NACP(位置精度)、SIL(完全性レベル)、NACV(速度精度)、NICBARO、RC。

ADS-Bの基礎記事で触れた品質パラメータが、実機の値として並ぶ。「ADS-Bの位置がどれくらい信用できるか」を数字で確認できる、という意味で教材価値が高い。

手順④:絞り込む(Filters) #

サイドバー上部の Filters タブに切り替えると、条件を指定して表示を絞れる。

  • Filter by altitude(高度の範囲。低空だけ見たいときに便利)
  • Filter by callsign/squawk/type code/ICAO hex id
  • Filter by source

最後の source が面白い。ADS-B / UAT / ADS-R / MLAT / TIS-B / Mode-S / Other / ADS-C から選べる。

たとえば MLATだけを表示すれば、「ADS-Bを積んでいないのに位置が割り出されている機体」だけが残る。仕組みの理解には、これがいちばん手っ取り早い。

手順⑤:キーボードショートカット #

このサイトはアルファベット1文字のボタンが並んでいて、最初は意味不明に見える。実はすべてショートカットキーの頭文字だ。

キー機能
Hホーム(表示をリセット)
Lラベルの表示切替
Oラベルの詳細表示
K航跡ラベルの切替
T全機の航跡を表示
M複数選択
P航跡を残す(Persistence)
I選択した機体だけ表示(Isolate)
F選択機を追尾(Follow)
Rランダムな1機を追尾
U軍用機のみ表示

使用頻度が高いのは H(迷子になったら戻る)、T(航跡を見る)、P(軌跡を残して航路の傾向を見る)あたりだ。

そして U が、このサイトの看板機能である。

「無検閲」とは何を意味するか #

ADS-B Exchangeが知られているのは、表示する機体を絞り込まないためだ。Flightradar24などは、運航者からの申し出などで特定の機体を意図的に非表示にする仕組みを持つ。ADS-B Exchangeにはそれがない。

だから、軍用機・政府専用機・要人輸送機も、電波が受信できていればそのまま出る。「他のサイトでは見えないのに、ここでは見える」という違いは、ここから生まれる。

一点、事実として書いておくと、運営体制は変わっている。ADS-B Exchangeは長くボランティア主体のコミュニティ運営だったが、2023年1月に航空データ企業のJETNETに買収された。当時、無検閲の方針が維持されるのかという懸念がコミュニティで持ち上がり、受信機の提供をやめた人もいた。2025年8月にはJETNET側でさらに統合が進んでいる。

現時点では無料・ログイン不要で無検閲のまま使えることを実際に確認したが、運営が民間企業の方針次第であることは、頭の片隅に置いておいていいと思う。

パイロットとして思うこと #

正直に書くと、この記事を書く前は「ADS-B Exchangeの売りは無検閲」だと思っていた。実際に触ってみて、評価が変わった。

パイロットにとっての価値は、1機クリックしたときの情報の深さのほうだ。IAS・TAS・マッハ・QNH・上空の風・外気温・磁方位・そしてFMSの選択高度——これらは通常、その機のコックピットにいる人しか知り得ない情報である。それが地上から見える。

もちろん、これは訓練や研究の道具として捉えるべきものだ。たとえば、

  • 自分が飛んだ空域の実際の風を、あとから確認する
  • 進入経路で他機がどの高度・速度で降りているかを見て、標準的なプロファイルを掴む
  • ADS-Bの精度パラメータが実際どの程度の値なのかを知る

若手にとっては、教科書の数値が実機でどう出るかを確かめる良い教材になる。TAS/CASの換算を習っても実感が湧かないなら、実機のIASとTASを並べて見るのがいちばん早い。

一方で、個々の機体の動きを詮索する道具ではないとも思う。見えることと、見ていいことは別だ。運航者や乗員のプライバシーに関わる使い方には、当然ながら慎重であるべきだろう。

道具としては、間違いなく面白い。まずは globe.adsbexchange.com を開いて、RJTT と打ってみてほしい。そこから先は、触っているうちに分かる。

まとめ #

  • 地図は globe.adsbexchange.com(トップページではない)。無料・ログイン不要。有料版の違いは広告と衛星写真レイヤーだけで、位置情報の中身は同じ。
  • 空港コードでジャンプするのが最速。Search タブの「Jump to Airport」に RJTT(羽田)などICAO4文字。緯度経度も可。地名は日本語で出る。
  • 検索は Hex ID・コールサイン・登録記号・機種コードの4つに対応。機種コード検索が便利。
  • 本命は機体クリック時の詳細パネル。IAS/TAS/マッハ、QNH、上空の風と外気温、真方位と磁方位、バンク角、そしてFMSの選択高度(Sel. Alt.)まで出る。「次に何をするつもりか」が読める。
  • Filters の source 絞り込みで、MLATだけを表示できる。仕組みの理解に有効。
  • ボタンの1文字はショートカットキー。H(リセット)、T(全航跡)、P(航跡を残す)、U(軍用機のみ)あたりが実用的。
  • 「無検閲」は表示する機体を絞らないという意味。ただし2023年1月にJETNETが買収しており、コミュニティ運営時代とは体制が変わっている。
  • パイロットにとっての価値は無検閲より情報の深さ。ただし訓練・研究の道具として使うべきで、個々の機体を詮索する用途には慎重に。

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本記事は、2026年8月時点で筆者が実際にADS-B Exchange(globe.adsbexchange.com)を操作して確認した内容をもとに整理したものです。ウェブサイトの仕様・画面構成・料金体系は変更される可能性があります。表示される情報の利用にあたっては、各サイトの利用規約および関係者のプライバシーに配慮してください。


出典

画像出典:Wikimedia Commons “Discone-solid-copper-700Mhz-2Ghz” by Adamantios(CC BY-SA 3.0)。イメージ画像(広帯域受信用のディスコーンアンテナ)。

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