記事一覧
143 件の記事
-
群馬県防災ヘリ「はるな」の事故報告書を読み直す——空間識失調と、引き返しの判断
2018年8月10日、群馬県防災航空隊のベル412EPが山の斜面に衝突し、搭乗9名全員が亡くなりました。運輸安全委員会の報告書(AA2020-1)は、空間識失調と引き返し判断の遅れを原因とし、国土交通大臣への勧告を出しています。着任後ゼロだった計器飛行訓練、使われなかった自動操縦装置、そして操縦士2名体制。報告書が書いていたことを整理します。
-
ドクターヘリ機長の36%が60代——高齢化は「民間だから」ではなく「要件」が作っている
ヘリ操縦士1,335名の年齢構成が国交省の資料に出ています。全体で50代以上が50%、ドクターヘリ機長は71%、消防防災ヘリ機長は65%。なぜ公共性の高い任務ほど高齢なのか。雇用形態と飛行経歴要件のどちらが効いているのかを、数字で分解します。要件は2,000時間から1,000時間に緩和済みでした。
-
免許を取った124人のうち、操縦士になれたのは69人——ヘリ求人の要件を数字で読む
ヘリ操縦士は足りないと言われます。しかし国の資料を読むと、新規ライセンス取得者の約44%が操縦士になれていません。実際の求人が求める「機長時間500〜1,000時間」と、免許取得直後の飛行時間。その間にある空白を、求人票と国の一次資料から突き合わせて整理します。
-
日航123便から41年——あの事故を契機に、航空は何を変えたのか
1985年8月12日の日本航空123便事故から41年。修理の検証、油圧系統の設計思想、事故調査体制の格上げ、夜間・山岳の救難、そして被害者支援まで。「何が変わったか」を分野ごとに、公表資料に基づいて淡々と整理します。
-
PPAPはなぜ20年続いたのか——チェックリストが「形」になるとき
パスワード付きZIPを送り、パスワードを別メールで送る「PPAP」。効果がないと言われながら20年続いた理由を辿ると、航空のチェックリスト形骸化とまったく同じ構造が見えてきます。手順ではなく前提が古くなること、そして「対策済み」という状態が検証を打ち切らせることについて。
-
ADS-B Exchangeの使い方——空港コードで飛べば、日本の空もすぐ見える
Flightradar24で見えない機体も映る「ADS-B Exchange」。無料・ログイン不要で使えますが、英語なので敬遠されがちです。空港コードでのジャンプ、機体クリックで出る詳細パネルの読み方、キーボードショートカットまで、実際に操作しながら手順を整理しました。FMS選択高度・IAS・QNH・風まで見えるのが、このサイトの本当の強みです。
-
関空〜京都ヘリ相乗り便が片道2万円——なぜ遊覧飛行より「安い」のか
スペース・アビエーションが関西国際空港と京都を結ぶヘリ相乗り便を片道2万円で始めます。同じH130の遊覧飛行と比べると1人あたりの分単価は半分以下。ところが運航者の時間あたり収入で見ると、チャーター料金の8〜9割を稼いでいます。安さの正体を、公表料金から分解しました。
-
航空大学校の教官募集は「飛行機」だけ——ではヘリの養成はどうなったのか
航空大学校が操縦教官(契約職員)を募集していますが、応募資格は飛行機の技能証明に限られ、回転翼は一文字も出てきません。6月に発表されたヘリ操縦士養成コースはどうなったのか。日本財団の助成採択、令和10年度末という開始時期、そして「対象は免許保有者」という設計を、一次資料で確認しました。教官をどこから連れてくるのかが最大の論点です。
-
異常接近の基準、日米でこう違う——FAAの「500フィート」と日本の「機長が認めた」
同じ2026年8月4日、羽田とワシントンで異常接近が起きました。日本の重大インシデントは「機長が衝突のおそれがあったと認めた」という主観だけが要件で、数値基準がありません。一方FAAのNMACは「500フィート未満」という数値を持っています。ただし数値が主観を置き換えているわけではない、というのが面白いところです。
-
重大インシデントの要件と「異常接近報告」の関係——羽田のニアミスは何に当たるのか
羽田でANA機と国交省の飛行検査機が異常接近しました。ではこれは重大インシデントなのか。実は判断の起点は「機長が衝突・接触のおそれがあったと認めたかどうか」という主観にあります。重大インシデント19事態の全体像と、異常接近報告が制度上どう位置づけられているかを、条文に沿って整理します。
-
AW139はなぜ公共安全機関に選ばれるのか——山岳での「ダウンウォッシュと高高度」のバランスを数字で確かめる
米国の警察・消防でAW139の採用が続いています。カタログ性能だけでなく、現場では「山岳の中型機として使いやすい」という評判をよく聞く機体です。降下員へのダウンウォッシュと高高度ホバリング性能の両立を、円板荷重という数字で検証してみると、少し意外な結果が出ました。
-
コックピットの「落とし物」が操縦を止める——空自T-4墜落と、飛行前に周りをクリーンにする習慣
入鹿池のT-4墜落事故で、約10kgのサバイバルキットが操縦かんに干渉した可能性が指摘されました。実はヘリでも、iPad・携帯電話・モバイルバッテリーが操縦系統に挟まって墜落・損傷した事例が続いています。固定されていない物がなぜ操縦を止めるのか、飛行前に何を見ればいいのかを現役ヘリパイロットの視点で整理します。