民間訓練試験空域の使用調整は「ネット」でもできる——ATMセンターの空域管理ユーザー端末とは

民間訓練試験空域の使用調整は「ネット」でもできる——ATMセンターの空域管理ユーザー端末とは

訓練や試験飛行で民間訓練試験空域(以下、訓練空域)を使うときは、事前に航空交通管理センター(ATMセンター)へ「訓練試験等計画」(訓練計画)を出して、空域の使用の承認を受けなければなりません(AIP ENR 5.3)。

この訓練計画は電話・電子メール・郵送でも出せますが、国土交通省はインターネットで出せるサービスも用意しています。

👉 国土交通省「民間訓練試験空域の使用調整等におけるインターネットの利用について」

あまり知られていない仕組みなので、実施要領(令和6年9月24日改正)と AIP ENR 5.3 をもとに、登録の方法と、訓練計画を出してから飛ぶまでの流れを整理しました。


① インターネットでできること #

国土交通省のページには、次の3つが挙げられています。

  1. 空域使用計画状況の確認(どの空域が、いつ、どの高度で使われる予定か)
  2. 訓練計画の提出
  3. 空域の使用に係る承認結果の受領

仕組みとしては、ATMセンターの航空交通管理処理システム(TEAM)に、利用者側のパソコン(空域管理ユーザー端末、「GA端末」)からインターネットで接続する形です。取扱い時間は24時間です。

実施要領には、訓練計画のほかに「特殊飛行等」(写真撮影や航空測量のように、一定の高度帯を保って特定の区間を VFR で飛ぶもの)の情報を扱う機能も書かれています。ただし、こちらは「ATMセンターから運用についての指示があるまで使用しない」とされています。


② 登録の方法 #

インターネットを使うには、事前に利用者として登録する必要があります。

項目内容
提出書類「空域管理ユーザー申請書」と「空域管理ユーザー端末ID申請書」(国交省のページに様式と記入例あり)
提出期限利用開始希望日の45日前まで(変更は30日前まで)
対象会社その他の団体のみ。セキュリティの関係で、個人の登録は受け付けない
審査・通知ATMセンターが審査し、「利用通知書」で利用開始日・端末ID・初期パスワードを通知
端末端末ごとに端末IDを割り当て。会社コード(ICAOの3文字略号など)+部門コード+席コードで構成
代替部門端末の障害時などに代わって調整できる部門を、申請書に書く欄がある
費用端末とインターネット接続は利用者の負担

申請書の送付先・問い合わせ先は、ATMセンターの航空交通管理管制官事務室(インターネットユーザー登録担当、福岡市東区)です。電話番号・メールアドレスは国交省のページに載っています。

パソコンの要件とセキュリティ #

実施要領の別紙には、端末の推奨要件が書かれています。

  • OS:Windows 10 Pro/11 Pro(64bit)を推奨
  • CPU 3.2GHz×4 以上、メモリ 4GB 以上、27インチ 1920×1080 以上のディスプレイを推奨
  • グラフィックは NVIDIA Quadro(メモリ2GB以上)を推奨

事務用のノートパソコンを想定した要件ではない、という印象です。最小要件はもう少し低く設定されています。

セキュリティ要件もあります。

  • 航空局が指定する証明書をインストールする
  • 関係者以外が操作できない場所に置く
  • 初期パスワードは受け取ったら8〜32文字に変更し、6か月を目安に更新する
  • USB などの外部媒体は、ウイルスがないことを確認してから使う

③ 訓練計画を出してから飛ぶまで #

民間訓練試験空域を使うまでの流れ AIP ENR 5.3・国土交通省「インターネットによる…取扱いサービス実施要領」をもとに作図 0 登録(初回だけ) 利用開始希望日の45日前までに申請書をATMセンターへ 会社・団体のみ。利用通知書で端末IDと初期パスワード 1 訓練計画を出す 使用予定日(JST)の1週間前〜前日12時(JST) 当日は空いていれば出発予定の1時間前まで → 受付番号 2 ATMセンターが調整 同じ時間帯・同じ空域は原則1機 重なると時間帯・高度帯の調整。試験飛行が優先 3 使用計画書を受け取る 前日16時(JST)以降、当日は飛行計画の前 受付番号で照会 → 調整番号。ネットでも受領できる 4 飛行計画に書く 第15項に空域名、第18項に通信機関と調整番号 例 NOTE=CTC=OSAKA INFO 135.6MHZ ASM=A12345 5 飛行中 担当の管制・通信機関に入出域時刻を通報 常時聴取。IFR機の情報が入れば空域を離脱 ※ 計画の時刻はすべて UTC。提出期限と受領の時刻は JST で決まっている。

ここからは、インターネットでも電話でも共通の決まりです(AIP ENR 5.3)。

訓練計画が必要な飛行 #

訓練空域で次の飛行をするときは、1飛行につき1通の訓練計画が必要です。

  • 技能証明の実地試験、耐空証明、無線局検査などのための試験飛行
  • 試験飛行の前の社内試験飛行
  • 訓練事業として行う訓練飛行
  • その他、訓練空域を使う訓練飛行など(曲技飛行を含む)

ただし、訓練空域の中にある飛行場等の場周経路に限った離着陸訓練は、空域の通過として扱われ、訓練計画は要りません。

提出期限 #

場面期限
原則使用予定日(JST)の1週間前から、前日の12時(JST)まで
当日使用計画を確認して空いている場合に限り、出発予定時刻の1時間前まで
技能証明試験・耐空証明試験・無線局検査ATMセンターと調整すれば、1週間より前でも出せる

提出すると受付番号を受け取ります。変更は原則として前日12時(JST)まで、当日は出発予定の1時間前までです。飛行中に担当の管制・通信機関を通じて変更を伝えることもできます。

調整と優先順位 #

同じ時間帯の同じ空域は、原則1機です。重なった場合は、ATMセンターから時間帯や高度帯の調整があります。内容が違う場合は、次の順に優先されます。

順位内容
1技能証明試験・耐空証明試験・無線局検査
2社内試験
3訓練
4その他

また、1機による1空域の使用は、原則として連続2時間までです。

使用計画書の受け取り #

承認の結果は「使用計画書」として受け取ります。

  • 前日:16時(JST)以降に、受付番号で照会
  • 当日:飛行計画を出す前に照会

使用計画書には調整番号が入っています。インターネットのサービスで受け取ることもできます。

飛行計画への記載 #

項目書くこと例
第15項空域名KK4.1
第18項担当の管制・通信機関の名称、周波数、調整番号NOTE=CTC=OSAKA INFO 135.6MHZ ASM=A12345

(例は AIP ENR 5.3 のもの)

飛行中 #

訓練機は、担当の Controlling Facility または Communication Facility に連絡し、訓練空域の入出域時刻を通報して、常に情報を聴取します。

例「00 時 00 分、TH12-1 に入域します。」(AIP ENR 5.3)

訓練空域の中でも、公示された待機経路や航空路の周りは IFR 機が飛ぶ空域です。IFR 機の情報が入ったら、その空域は訓練に使えず、使用中なら速やかに離脱するなどの措置をとります。雷雲を避ける IFR 機を通すために、訓練の一時中断を求められることもあります。


④ 間違えやすいところ #

実際に計画を出すときに引っかかりそうな点です。

「実施日」は UTC の日付、締切は JST #

訓練計画の時刻はすべて UTC です。そして「訓練/試験実施日」は、空域に入る予定の UTC の日付です。AIP の例では、

21日 2300UTC に入域予定の場合の訓練/試験実施日は 21 日

とされています。21日 2300UTC は日本時間では22日の朝8時です。一方、提出期限(前日12時)や使用計画書の受け取り(前日16時)は JST で決まっています。

朝9時前(JST)に入る計画では、UTC の日付が前日になる——ここは毎回確認したほうがよいと思います。

FL290 以上は許可の申請も兼ねる #

FL290 以上の空域に係る訓練計画の提出と承認には、航空法第94条の2第1項ただし書の申請と許可が含まれるとされています。

通過するだけの VFR 機も確認が必要 #

訓練をしない VFR 機が訓練空域を通過する場合も、飛行前に ATMセンターまたは空港事務所等で空域の使用状況を確認し、原則として担当の管制・通信機関に連絡する必要があります。

見張り義務はなくならない #

訓練空域の承認を受けていても、航空法第71条の2(見張り義務)は免除されません。AIP は、ストロボライトやランディングライトの点灯も推奨しています(装備していて運航上支障がない場合)。


ヘリの運航者にとって #

ここからは私の考えです。

ヘリの会社では、型式限定や技能証明の訓練・試験、整備後の社内試験飛行、耐空証明の検査飛行などで訓練空域を使う機会があります。いずれも訓練計画が必要な飛行です。

電話で出す場合、使用状況の確認、提出、受付番号、前日16時以降の照会と、ATMセンターとのやり取りが何回か発生します。インターネットなら空いている空域を見ながら計画を組め、承認結果も画面で受け取れるので、訓練の多い会社ほど登録の価値はあると思います。

一方で、登録は会社単位で、45日前までの申請が必要です。必要になってから慌てないよう、訓練の計画を立てる担当部署で、事前に手続きを済ませておくのがよさそうです。


まとめ #

項目内容
何ができる空域の使用計画状況の確認、訓練計画の提出、承認結果(使用計画書)の受領
誰が使えるATMセンターに登録した会社・団体(個人は不可)
登録利用開始希望日の45日前までに申請書2種を提出
電話・メールネットを使わなくても、電話・電子メール・郵送で提出可能
提出期限使用予定日の1週間前〜前日12時(JST)。当日は出発1時間前まで(空きがあれば)
受領前日16時(JST)以降。当日は飛行計画の前
時刻計画はUTC。実施日は入域の UTC 日付
飛行中入出域時刻を通報し、常時聴取

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出典 #

本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。手続きの詳細・連絡先は国土交通省のページと最新の AIP で確認してください。

ヒーロー画像:「Kawajima Honda Airport 1」by 京浜にけ(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)。ホンダエアポート(埼玉県川島町)。イメージ画像です。掲載にあたり切り抜きとリサイズを行いました。

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